仏事・宗教・美術等の出版社
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霊園ガイドNo.82<発行日:2013年9月15日>より再録
◎納得できない時には個人情報を残さない
石材店の営業マンが墓石を売ることに必死になるあまり、強引な勧誘を行う例は以前から報告されています。先ほども述べたように、ひとつの霊園に20~30社もの石材店が参入しているような場合、フリーのお客様の担当になる順番はなかなか回ってきません。そのため、チャンスを逃すまいと、強引な営業に走りがちなのでしょう。
気をつけなければならないのは、霊園見学の際に受付シートなどに名前を書くと、その時点で担当石材店が決定してしまうということです。
そのため、見学にあたっては、営業マンの案内時の対応や質問に対する答え、墓石建立後のサポートなどについてしっかり確認し、納得できない時には名前や電話番号といった個人情報は残さないようにしてください。
◎石材店から霊園を選ぶ方法もある
「担当者がいい加減なので変えてほしい」「複数の業者から相見積もりを取りたい」「事前に指定業者を知りたい」。これらのことは、これから高価な買い物をしようという消費者としては当たり前の要求です。例えば家を建てる時、数社のハウスメーカーから見積もりを取って比較検討するのは当然のことでしょう。しかし、お墓ではそれが認められないのです。(公営霊園では複数の石材店を比較することが可能)
指定石材店制度には、墓石や施工工事のことで何か問題が生じた時、当事者である石材店とともに、その業者を指定した霊園側も巻き込んだ協議ができるといった消費者側のメリットもありますが、上記の事例のような問題点も多いのが実情です。こうしたトラブルにあわないためには、事前に石材店について調べ、意中の石材店を通じて霊園を紹介してもらったり、見学に同行してもらうといった方法があります。石材店についての情報は、本誌に掲載されている広告や、インターネットで知ることができます。
◎お墓に対する想いをしっかり持った担当者を選ぶ
これらは霊園に入っている多くの指定業者の中から、質の悪い石材店(営業マン)に当たってしまった方の事例だと思われます。
こうしたケースでは、一度決められた担当は原則として変更できませんし、担当の石材店では嫌だということになれば、その霊園でお墓を建てることを諦めなければなりません。
霊園見学の際、石材店にすすめられるまま仮契約や申し込みをしてしまうと、霊園に「私は数ある指定指定業者の中から、この石材店を指名します」と伝えるのと同じことになり、同じ霊園で他の石材店から説明を聞くことができなくなってしまいます。申し込みをする前に、担当の営業マンは誠実な人柄であるか、専門的な知識があるか、お墓に対する想いをしっかりと持っているかを判断することが大切です。特に、身だしなみは重要なチェックポイントです。
・「墓」の相談者の2つの特徴
国民生活センターおよび東京都消費生活総合センターによると、お墓に関する相談を寄せる方には、以下のような2つの特徴があるということでした。
たとえ担当者が入金を急かしても、それに乗せられてはいけません。そもそも、支払いを急がせるような石材店は、信用できません。営業マンから契約を迫られたり、代金の支払いを求められたりした際には、曖昧な態度ではなく、毅然とした対応で意思を伝えることが大事です。
また、相談の中でも消費者側に問題があると思われる事例としては、霊園を見学せず、インターネットに掲載されていた情報と、自宅に取り寄せたパンフレットを見ただけで墓所を契約し、後日、解約を希望しているというものがありました。最近では、ウェブで墓石の注文を受け付けるサイトもありますが(一体どれだけの人がこの方法でお墓を依頼するのかは甚だ疑問です)、現地を見ることもしないでお墓を契約するなどは、とんでもないことです。
霊園へ実際に足を運び、自分の目で確かめなければ、周辺の状況や環境などが分かりません。お参りの時のアクセスはどうなのか、道路は混雑するのかといった情報も、訪問してみなければ分からないでしょう。お墓は一度購入したら、なかなか買い換えることはできません。お墓さがしにあたっては、面倒だからといって横着をせず、いくつかの霊園を見学した上で、墓石そのもののことだけではなく、石材店の実績や担当者の人柄なども含め、じっくり検討するようにしてください。
・クーリングオフについて正しく知る
「クーリングオフ」とは、一定期間内であれば、無条件で申し込みの撤回または解除ができる法制度のことです。(その際、違約金などを請求されることはありません)
これは、不意打ち的な勧誘で、冷静に判断できないまま契約をしてしまいがちな販売方法に対して、消費者が頭を冷やし、再考する機会を与えるために導入された制度で、霊園における墓所の契約に対しても、有効な場合があります。
もし、お墓の契約をした後で解約したいと考えている時は、クーリングオフの利用をおすすめします。(※墓石の場合、クーリングオフできるのは、契約書の受領から8日間です)
クーリングオフの方法ですが、通知は必ず書面で行ないます。ハガキなどに必要な項目を記入し、控えとして両面のコピーを取った後に、「特定記録郵便」または「簡易書留」など、記録の残る方法で石材店宛てに送付してください。通知に必要な項目については、国民生活センターのホームページで確認できます。建墓ローンなどのクレジット契約をしている場合は、クレジット会社にも同時に通知します。ハガキのコピーと受領証は大切に保管してください。
なお、クーリングオフは訪問販売、電話販売、マルチ商法などを想定して作られた制度なので、自ら店舗に出向いて契約をした時には適用されません。ただし、電話勧誘によって有利な条件を告げられ呼び出された場合等は訪問販売と同様と見なされ、クーリングオフの対象となります。
さらに、業者が「クーリングオフはできない」と虚偽の説明をしたり、脅かしたりしてクーリングオフができなかった場合には、クーリングオフ妨害があったと見なされ、所定の期間を過ぎても、クーリングオフができます。
・良い建墓は良い石材店選びが重要
ここまで読んでいただければお分かりの通り、良い建墓を実現するためには、良い石材店を選ぶことがたいへん重要です。お墓を建てる時には、どうしても費用のことが気になると思いますが、石材店に依頼するのは墓石の施工工事だけというわけではありません。お墓を建てた後、お墓を長く良い状態で維持していくためにはメンテナンスが欠かせません。また、回忌法要やお寺との付き合い方まで、墓石建立後も何かとアドバイスを受ける必要があります。最近では石材店の数が増え、中には建てた後のアフターケアをしない無責任な石材店もあるようです。埼玉県の霊園で話を聞いたある石材店の社長は、記者に対して、「ウチはお墓を建てた後は、施主とは連絡を取りませんよ」と、はっきり口にしていました。こうした姿勢の石材店では、信頼関係を築くことは難しいでしょう。
では、信頼関係を築くことのできる、良い石材店の条件とは、どんなものなのでしょうか。
すでに述べたように、石材店の仕事とは「お墓を建てるまで」ではありません。お墓を建立した後も、後世までお付き合いが続いていくものです。そのため、石材店には何より永続性が求められます。
永続性のある石材店というのは、長年にわたる信用と実績のある企業のことです。さらに、長い間墓石事業に従事し、数多くの建墓実績がある石材店は、信頼できると言えるでしょう。長くその地域に定着している石材店は、それだけ施主の信用に見合うだけの仕事をしてきたということだからです。お墓は代々継承されていくものですから、施主の信用を得ているということは、石材店にとって最も大切なことです。
信頼できる石材店を選ぶことは、満足できる建墓のための「はじめの一歩」です。
・『誰と』お墓を建てるのか
石材店とは主に墓石などを加工・販売する業者です。霊園で待機する石材店の営業スタッフは、お客様に霊園や墓石について説明をし、契約に結びつけるために努力します。しかし、石材店の仕事とは、ただ墓石を売ってお墓を建てることではありません。
大切なご家族を亡くされたり、近い時期に亡くなることが分かっていたりといった、悲しい想いを持った人々の心に寄り添い、お墓というものを通して、みなさまがまた力強く歩き出すためのお手伝いをする尊い仕事なのです。
取材で実際に建墓を経験された方々にお話を伺う中で「石材店が話を聞いてくれなかった」と訴える方もいらっしゃいました。
病気でご主人を亡くされ、いくつもの霊園を見学した後に神奈川県藤沢市の霊園にお墓を建てたという女性は、取材で次のように話してくれました。
「初めて訪れた霊園で案内をしてくれた石材店さんは、費用のことや石のことばかり話して、こちらの話を聞いてくれないんです。わたしは本当はお墓なんて建てたくないんですよ。主人が元気でいてくれたら、お墓なんて必要ないんですから。でも、その人にはそんな気持ちが分かってもらえなかったみたいで……」
読者のみなさまの中にも彼女のように、辛い気持ちを抱えてお墓さがしをされている方がいらっしゃるかもしれません。そんな時は決して焦らずに、ゆっくりと時間を掛けて、信頼できる石材店(もしくは、信頼できる担当者)を探すことをおすすめします。
お墓は、建てたらそれで終わりというわけではなく、子や孫に受け継がれていく特別な家族のモニュメントです。だから「どこに」「どんな石で」建てるかということよりも、「誰と(その石材店と)」建てるかが最も大切なことなのです。お墓づくりを安心して任せることができて、長く付き合っていける、良い石材店(良い担当者)を選んでください。それができれば、みなさまの考える理想の建墓に、大きく近づくことになります。
・“お墓さがし”は、“石材店さがし”
人生の最大の買い物は「家」であると言われれいます。しかし、日本の住宅が約30年で建替年数を迎えるのに対して、終の棲家である「墓」は、それよりもずっと長い間、まいなさまの心の支えとして、また、私たちがこの世に生きた証として存在し続けます。だから、誰しも良いお墓を建てたいと願うのです。
では、良いお墓とは、一体どんなお墓でしょうか。墓所面積の大きなお墓や、高価な石材で建てられたお墓のことでしょうか。
たしかに、それらも良いお墓には違いないかもしれません。しかし、施主の気持ちを理解して、心により祖てくれる誠実な担当者とともに力を合わせてつくり上げたお墓が、本当に良いお墓だと言いことができるのではないでしょうか。
お墓さがしは、同時に石材店さがしでもあります。読者のみなさまが、良い石材店の誠実な担当者とともに力を合わせ、最高のお墓づくりを実現されることを願ってやみません。
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